せ度い、所が悲しい事には秀子の利益に成る様な事柄は一個もない、余が知って居るだけの事を述べ立てたら秀子は決して助かりッこがない、イイエ此の女は悪事などする様な者では有りませんと余の信ずる所を述べたとて何の益にも立たぬ。
 家の人誰も彼も、殆ど残らずと云っても好いほどに秀子を疑って居るのだから何うも陪審員なども秀子を疑うであろう、殊に高輪田長三などは秀子を捕縛せしむるまでは休《や》まぬであろう。
 余は此の様に思って、只管検屍を恐れたが、恐れても其の甲斐はない、定めの時刻に少しも違わずに検屍は始まった、場所は彼の玉突き場の隣に在る広間である、お浦の死骸も其所に在るのだ。
 証人として第一に呼び出されたのが余の叔父だ、叔父は堀の底を探っては何うだと言い出した発頭人である為、何故に堀の底へ目を附けたかとの廉《かど》を問われるのだ、次が高輪田、次が根西夫人、次が秀子、最後が余と云う順序である、余は是等の人々が検査官の問いに対し、何の様に答えたか勿論知る事は出来ぬけれど、後で聞いた所に由れば、叔父は「此の死骸を誰と見るや」との問いに「先の養女お浦と認める」と答え高輪田は「首のない屍骸ゆえ誰とも認
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