室から出て来た、オヤオヤと思い其の傍に行って「貴方は何で虎井夫人の室に居ました」探偵「秀子さんの素性を詳しく聞きたいと思いまして」余「シタが夫人は病気ゆえ好く答える事は出来なんだでしょう」探偵「イエ病気は昨日熱が引いてから大いに好くなったと云い差し支えなく問答が出来ました、アノ様子では今明に起きるでしょう、心配で最う寝て居られぬなどと云って居ました」余「爾して秀子の素性を詳しく聞きましたか」探偵「イイエ彼の夫人は唯附添人として雇われた丈で詳しくは知らぬと云いました」扨は彼の夫人、自分が秀子の乳婆であった事を推し隠し、昨今の知り合いの様に云ったと見える、余「貴方は余ほど秀子を疑うと見えますネ」探偵「イエ探偵と云う者は人を疑っては間違います、私は誰をも疑わず唯公平に証拠を詮索するばかりですが、併し秀子さんは今の所確かに誰からも疑われる地位に立って居ます、浦子さんと劇《はげ》しく喧嘩した事実なども多勢に知られて居ますから」余「ですが森さん、お浦の死骸に首のないのは何う云う訳でしょう」
 何故か此の問いに森探偵は殆ど急所でも衝かれたと云う様にビクリとして、能く喋る其の口を噤んで了った、余「首は
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