間がない、読者は覚えて居るだろうけれど茲に其の全文を再録せん。
[#ここから本文より2字下げ、本文とのアキなし]
  明珠百斛、王錫嘉福、妖※[#「※」は「かみがしらの下に几」、読みは「こん」、197−下9]偸奪、夜水竜哭、言探湖底、家珍還※[#家珍還※「※」は「きへん+賣」、読みは「とく」、197−下10]、逆焔仍熾、
  深蔵諸屋、鐘鳴緑揺、微光閃※[#微光閃※「※」は、へんが「火」、つくりが「日」の下に「立」、読みは「よく」、197−下11]、載升載降、階廊迂曲、神秘攸在、黙披図※[#黙披図※「※」は「たけかんむりの下にかねへんの碌」、読みは「ろく」、197−下12]、
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 全く此の家の先祖が国王より賜わった莫大の宝物を此の塔へ隠して置いて、爾して其の旨を子孫へ暁らせる為に作ったのである、先祖代々此の家の当主が相続の時に必ず咒語を暗誦せねば成らぬ事に成って居た仔細も分る、此の塔の底なる、今余と秀子との立って居る此の室に其の宝が隠れて居るのだ。
 秀子は説き終って「此の咒語を解き明して宝を取り出す道を開いたのが、私の密旨の一部です、一部だけでも仕遂げたのは未だしもの幸いゆえ、之を父上と貴方とへの万一の御恩返しと致します」斯う云って未練もなく立ち上った、之で全く此の所を、イヤ此の家を立ち去る積りと見える、余は再び叫んだ「貴女は先刻私が、貴女の身に掛かる濡衣が総て晴れる事と成ったと云ったのを何とお聞きでした、昔の汚名も新しい疑いも悉く無実であると云う事が明白に分る事と為って居ますのに」誠ならば嬉しやとの心、顔には現われねど、何所にか動き立つ様に見えた、秀子「誰れが其の無実と云う事を証明して呉れますか」余「夫は権田時介が」秀子は唯怪訝に、「ヘエ」と云った儘だ。
 余は自惚かも知れぬけれど「私が証明します」と答えたなら秀子が定めし喜んだで有ろうけれど、権田時介が証明するとでは余り嬉しくないと見え、確かに失望の様が見えた、爾して「でも権田さんは其れを証明する代りに何うせよとか斯うせよとか報酬の様に何か条件を附けるのでしょう」其れは勿論である、救うて遣る代りに己の妻と為れと云うのが彼の唯一の目的である、けれど決して妻に成らねば救わぬと云うではない、又救うた報酬に無理に妻にしようと云うでもない、唯救うて遣って其の上に猶及ぶ丈の親切を盡したなら其のうち
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