倒れて居たとは天の助けとも何とも譬え様がない、若しアノ時に強い電光が差し込まなんだなら何うであろう、余は茲へ来て秀子の死骸を見出す所であった、之を思うと真実神に謝する心が起った、余「秀子さん其れこそ神が貴女の祈りを聞し召して救いの御手を差し延したと云う者です、斯くまで厚く神の恵みを得る人は千人に一人と云い度いが、実は万人に一人もない程です、之に対しても貴女は死ぬの、身を隠すのと其の様な了見を起しては成りません」
 此の諭しには深く感じた様子で、立ち去ろうと構えて居た身を、再び腰掛の上に卸し、暫く目を閉じ胸を撫で、漸く心の落ち着くと共に更めて神に謝した、余も共々に祈って居た。
 頓て祈り終ると徐に余に向い「丸部さん、貴方が茲へ来て下さったので私の密旨の一部分は届きました」余は合点の行かぬまま「エエ」秀子「イエ私の密旨は三つ有りますが、三つとも届かずに此の世を去る事と思いましたのに一つだけ届く事に成ったのは、成ほど神の救いです」余「一つだけとは何の事です」秀子「ハイ此の塔の秘密として茲に隠されて居る宝を世に出し度いと云うのです、初めは自分で取り出すと云う積りでしたが、貴方にお目に掛かって後は、貴方に取り出させるのが当然だと思い、咒語の意味をお判じ為さいとか、図※[#「※」は「たけかんむりの下にかねへんの碌」、読みは「ろく」、196−上4]を能く研究なさい抔と屡ばお勧め申しました」なるほど爾う勧めたのみでなく、実際咒語と図※[#「※」は「たけかんむりの下にかねへんの碌」、読みは「ろく」、196−上5]とを余の目に触る様にしたのも此の秀子である、余「爾でしたか、私は爾とまで思いませず、図※[#「※」は「たけかんむりの下にかねへんの碌」、読みは「ろく」、196−上7]も咒語も充分には研究せずに」秀子「其れだから私は歯痒い様に思って居ましたが、今は貴方が塔の底の此の室迄お出成さったからは、実際に咒語を解いたも同じ事です」と云い又も言葉を更ためて「丸部さん、私は自分の穢れた名の為に、貴方のお名をも父上のお名をも穢し、申し訳が有りませんが、唯此の塔の底の宝が貴方の手で取り出される事に成ったと思えば、聊か罪を償う事が出来た様におもい、幾等か心が軽くなります」
 言葉の意味は分って居るが、塔の底の宝とは何の事であるか合点が行かぬ、余「エ、塔の底の宝とは」と問い返すと、秀子は呆れる様に目
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