けられたり妾是まではチラと見たれど其後の事は知らず唯斯く露見する上は母は手引せし廉《かど》あれば後にて妾よりも猶お酷《ひど》き目に逢うならんと、驚き騒ぎて止まざるゆえ妾は直に其手を取り裏口より一散に逃出せり、夜更なれども麻布の果には兼て、一緒に奉公せし女安宿の女房と為れるを知るに由り通り合す車に乗りて、其許に便《たよ》り行きつゝ訳は少しも明さずに一泊を乞いたるが夜明けて後《の》ちも此辺りへは人殺しの評《うわさ》も達せず妾は唯金起が殺されたるや如何にと其身の上を気遣うのみ去れども別に詮方あらざれば何とかして此後の身の振方を定めんと思案しつ又も一夜を泊りたるに今日午後一時過ぎに谷間田探偵入来り種々の事を問われたり固《もと》より我身には罪と云う程の罪ありと思わねば在りの儘を打明けしに斯くは母と共に引致《いんち》せられたる次第なり
 以上の物語りを聞了《きゝおわ》りて荻沢警部は少し考え夫《それ》では誰が殺されたのか(紺)誰が殺されたか夫《それ》までは認めませんが多分金起かと思います(荻)ハテ金起が―併し金起は何《ど》の様な身姿《みなり》をして居た(紺)金起は長崎に居る時から日本人の通りです一昨
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