金起と割無《わりな》き仲と無《な》れり去れど施寧は其事を知らず益々妾を愛し唯一人なる妾の母まで引取りて妾と共に住わしめたり母は早くも妾が金起と密会する事を知りたれど別に咎むる様子も無く殊に金起は兄施寧より心広くしてしば/\母に金など贈ることありければ母は反《かえ》って好き事に思い妾と金起の為めに首尾を作る事もある程なりき其内に妾は孰《たれ》かの種を宿し男の子を儲《もう》けしが固より施寧の子と云いなし陳寧児《ちんねいじ》と名《なづ》けて育てたり是より一年余も経たる頃|風《ふ》とせしことより施寧は妾と金起との間を疑い痛《いた》く怒りて妾を打擲《ちょうちゃく》し且つ金起を殺さんと迄に猛りたれど妾|巧《たく》みに其疑いを言解《いいと》きたり斯くても妾は何故か金起を思い切る心なく金起も妾を捨《すて》るに忍びずとて猶お懲りずまに不義の働きを為し居たり、寧児が四歳の時なりき金起は悪事を働き長崎に居ることが出来ぬ身と為りたれば妾に向いて共に神戸に逃行《にげゆ》かんと勧めたり妾は早くより施寧には愛想尽き只管《ひたす》ら金起を愛したるゆえ左《さ》らば寧児をも連れて共に行かんと云いたるに※[#「研のつくり」
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