通り探偵するサ外の事と違い探偵ほど間違いの多い者は無いから何うかすると老練な谷間田の様な者の見込に存外間違いが有て貴公の様な初心の意見が当る事も有る貴公は貴公だけに遣《やっ》て見たまえ(大)ヘイ私《わた》しも是から遣て見ます(荻)遣るべし/\」と励す如き言葉を残して荻沢は立去れり、大鞆は独り手を組で「旨い長官は長官だけに、一寸《ちょい》と励まして呉れたぞ、けどが貴公の様な初心とは少し癪に障るナ、初心でも谷間田の様な無学には未だ負けんぞ、ナニ感心する者か、併し長官さえ彼《あ》れ程に賞《ほめ》る位だから谷間田は上手は上手だ自惚《うぬぼれ》るも無理は無い、けどが己は己だけの見込が有るワ、見込が有るに依て実は彼奴《きゃつ》の意見の底を探りたいと下から出て煽起《おだて》れば図《ず》に乗てペラ/\と多舌《しゃべ》りやがる、ヘン人《ひと》、彼奴が経験経験と経験で以て探偵すれば此方は理学的と論理的で探偵するワ、探偵が道楽で退校された己様だ無学の老耄《おいぼれ》に負て堪る者か、彼奴め頭の傷を説明する事が出来んで頭挿《かんざし》で突たなどと苦《くるし》がりやがるぞ此方は一目見た時からチャアンと見抜てある所
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