り類の無い名前だから思い出した、お紺/\、尤も今|未《ま》だ其女が居るか居無いか夫も分らぬけれど、旨く居て呉れさえすれば此方の者だ、女の事だから連て来て少し威《おど》し附ればベラベラと皆白状する、何《ど》うだ剛《えら》い者だろう(大)実に恐入ったナア、けどが其宿は何所に在るのだ築地の何所いらに、夫さえ教えて呉れゝば僕が行て蹈縛《ふんじばっ》て来る、エ何所だ直に僕を遣て呉《くれ》たまえ」谷間田は俄《にわか》に又茶かし顔に復《かえ》り「馬鹿を言え是まで煎じ詰めた手柄を君に取られて堪る者か(大)でも君は、僕の為に教えて遣ると云ッたでは無いか、夫で僕を遣て呉れ無いならば教えて呉れたでは無い唯だ自慢を僕に聞せた丈の事だ(谷)夫れほど己の手柄を奪い度《た》きゃ遣てやろうよ(大)ナニ手柄を奪うなどと其様な野心は無い僕は唯だ―(谷)イヤサ遣ても遣《やろ》うが第一君は何うして行く(大)何うしてッて外に仕方は無いのサ君に其町名番地を聞けば後は出た上で巡査にでも郵便配達にでも聞くから訳は無い、其家へ行て此家《このや》にお紺と云う者は居無いかと問うのサ」谷間田は声を放ッて打笑い「夫だから仕方が無い、夜前人殺と
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