くない》で、エ一本の髪の毛が何うして証拠に成る」下から煽《あお》げば浮々《うか/\》と谷間田は誇り裂けるほどに顔を拡げて「先《ま》ア見たまえ此髪の毛を」と云いながら首に掛たる黒皮の懐中蟇口《ふところがまぐち》より長さ一尺強も有る唯一本の髪の毛を取出し窓の硝子に透《すか》し見て「コレ是だ、先ず考え可し、此通り幾曲りも揺《ゆっ》て居るのは縮れッ毛だぜ、長さが一尺ばかりだから男でもチョン髷に結《いっ》て居る髪の毛は是だけの長《たけ》は有るが今時の事だから男は縮毛なら剪《かっ》て仕舞う剪《から》ないのは幾等《いくら》か髪の毛自慢の心が有る奴だ男で縮れっ毛のチョン髷と云うのは無い(大)爾々《そう/\》縮れッ毛は殊に散髪に持《もっ》て来いだから縮れッ毛なら必ず剪て仕舞う本統に君の目は凄いネ(谷)爾すれば是は女の毛だ、此人殺の傍には縮れッ毛の女が居たのだ(大)成る程(谷)居たドコロでは無い女も幾分か手を下したのだ(大)成るー(谷)手を下さ無《な》ければ髪の毛を握《つか》まれる筈が無い是は必ず男が死物|狂《ぐるい》に成り手に当る頭を夢中で握《つか》んだ者だ夫《それ》で実は先ほどもアノ錐の様な傷を若《も
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