分で分らぬ癖に人の云う事に批《ひ》を打《うち》たがる(大)けどが君、君が根拠とするのは唯《たゞ》様々の傷が有《ある》と云うだけの事で傷からして大勢と云う事を考え大勢からして博奕場と云う事を考えた丈じゃ無いか詰り証拠と云うのは様々の傷だけだ外に何も無い、第一此開明世界に果して其様な博奕場が有る筈も無し―(谷)イヤ有るから云うのだ築地へ行ッて見ろ支那人が七八《チーパー》も遣るし博奕宿もあるし宿ッてもナニ支那人が自分では遣らぬ皆日本の博徒に宿を借して自分は知らぬ顔で場銭《ばせん》を取るのだ場銭を、だから最《も》うスッカリ日本の賽転《さいころ》で狐だの長半などを遣《やっ》て居るワ(大)けどが博奕打にしては衣服《みなり》が変だよ博多の帯に羽織などは―(谷)ナアニ支那人の博奕宿へ入込む連中には黒い高帽を冠ッた人も有るし様々だ、夫に又アノ死骸を詳しく見るに手の皮足の皮などの柔な所は荒仕事をした事の有る人間でも無し、かと云《いっ》て生真面目《きまじめ》の町人でも無い何うしても博奕など打つ様な惰《なま》け者だ」大鞆は真実感心せしか或は浮立《うきたゝ》せて猶お其奥を聞《きか》んとの巧計《たくみ》なるか急に
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