は賭博場《ばくちば》だアネ(大)成るほど賭場は博奕場《ばくちば》か夫なら博奕場の喧嘩だネ(谷)爾サ博奕場の喧嘩で殺されたのよ博奕場だから誰も財布の外は何も持《もっ》て行ぬがサア喧嘩と云えば直《すぐ》に自分の前に在る金を懐中《ふところ》へ掻込んで立ち其上で相手に成るのが博奕など打つ奴の常だ其所には仲々抜目は無いワ、アノ死骸の当人も矢張り夫《それ》だぜ詳しい所までは分らぬけれど何でも傍に喧嘩が有《あっ》たので手早く側中《かわじゅう》の有金を引浚ッて立《たと》うとすると居合せた者共が銘々に其一人に飛掛り初の喧嘩は扨置《さておい》て己の金を何うしやがると云う様な具合に手ン手《で》ンに奪い返す所から一人と大勢との入乱れと為り踏れるやら打《うた》れるやら何時《いつ》の間にか死《しん》で仕舞ッたんだ、夫だから持物や懐中物は一個《ひとつ》も無いのだ、エ何うだ恐れ入《いっ》たか」大鞆は暫し黙考《かんが》えて「成る程旨く考えたよ、けどが是は未だ帰納法《きのうほう》で云う「ハイポセシス」だ仮定説だ事実とは云われぬテ之から未だ「ヴェリフィケーション」(証拠試験)を仕て見ん事にや(谷)サ夫が生意気だと云うのだ自
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