は僕じゃあるまいかというので誰かやって来たのだそうだ。そしてその前か後か知らないが、内務省の役人一人と兵庫県の役人一人と都合二人で、僕を探しにパリに来ていたのだそうだ。
 その私服は、まだ若い男だったが、その前後にもよくいろいろ親切にしてくれた。そこへ来る途中で買った煙草がもうなくなって困っていると、フランス出来のいやな煙草ではあるが、自分の持っているのを箱のままくれたりもした。また、あとでスペインの国境に向けて追放されようとした時にも、マドリッドよりもバルセロナの方に君等の仲間は多いんだからと言って、わざわざ地図や時間表などを探して来て、そこへ行く道筋や時間を教えてくれたりもした。
 が、その男のほかにもう二、三人代る代る僕のそばへ来て番をしている私服がいたが、そいつらの一人は実にいやな奴だった。
「おい、わざわざリヨンから出て来て演説したんだから、大ぶ貰ったろう。」
 というようなことを、たぶん戦争で受けた傷だろうと思う口のそばの大きな傷あとを妙に下卑て動かしながら、その口さきをすぐ僕の顔近くまで持って来て尋ねて見たり、また、
「おい、これはドイツで買ったんだろう。」
 と言いなが
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