とうに夜になっていた。
一人の私服がちょっと室のそとへ出たかと思うと、すぐ四、五人の荒らくれ男の制服がやって来て、いきなり僕の両手を鎖でゆわいつけて、引っぱり出した。
「いよいよ監房かな。」
と思っていると玄関の方へ連れて行かれて、そこには一台の大きな荷物自動車と十人ばかりの巡査とが待っていた。そして、しゃにむに僕をその箱の中に押しあげて、十幾人かの巡査どもが続いて乗りあがるとすぐ自動車は走り出した。
高い屋根のある大きな箱だ。中は真暗だ。僕は両手をゆわえられ、両腕や肩を握られながら、その片すみにあぐらをかいていた。
折々奴等の吸う煙草のあかりで、奴等の顔が見える。どうもヨーロッパ人くさくない面つきの奴が多い。あるいはアフリカあたりの植民地の蛮民か、それとも植民地の兵隊との相の子か、と思われるような奴等だ。奴等はみな今どこかで喧嘩でもして来たような、ひどく昂奮した勢いでいた。そして何だか訳の分らない言葉でキャッキャッと怒鳴っていた。
やがて、僕の一方の肩をつかまえていた奴が、熊のような唸り声を出して、僕の肩をこづき始めた。僕は形勢不穏と見てとって眼鏡をはずしてポケットに入れた
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