、梨子だの桜だののいろんな白や赤の花が点せつする。そして、それを透かして、向うの家々の壁や屋根の、オランジュ・ルウジュ色が映える。それは、ほんとうに浮々とした、明るい、少しいやになるくらいに軽い、いい景色だ。が、その景色も少しも僕の心を浮き立たせない。
 それに、よくもよくも雨が続いて降りやがった。
 もうメーデー近くになった。僕はほとんどドイツ行きをあきらめた。そしてひそかにまたパリへ出かけようと決心した。パリのメーデーの実況も見たかった。もう一カ月ばかり続けているミディネット(裁縫女工)の大罷工も見たかった。ついでに今まで遠慮していたあちこちの集会へも顔を出して見たかった。いろんな研究材料も集めて見たかった。また新装をこらしたパリの街路樹の景色も見たかった。女の顔も見たかった。

 四月二十八日の夜、僕はリヨンの同志のただ一人にだけ暇乞してひそかにまたパリにはいった。そしてル・リベルテエル社のコロメルを訪ねて、メーデーの当日、セン・ドニの集会でまた会おうということになった。
 メーデーの屋外集会や示威行列は許されてなかった。労働者のプログラムの中にもそれはなかった。共産党の政治屋ど
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