モを始終うろついているおまわりさんのぴかぴか光る目がこわかったのだ、そしてそうそう逃げ出したのだ。
 こんどは、室の中で栓一つねじれば、水でも湯でも勝手に使えた。西洋風呂もあった。西洋便所もあった。
 僕は、猿またの捨て場所にこまって、そっとこの便所へ突っこんで、うんとひもをひっぱってドドドウと水を流して見た。うまく流れればいいがと思いながら、大ぶ心配しいしいやったんだが、何のこともなく綺麗に流れてしまった。
「なあに、そんな心配はないよ。フランスの便所は赤ん坊の頭が流れこむだけの大きさにちゃあんとできているんだからね。」
 僕がその話をしたら、友人の一人がこう言って、そしてドイツでやはりこのでん[#「でん」に傍点]をやって失敗した話をした。猿またが中途でひっかかって管がつまってしまったので、お神さんに大ぶ油をしぼられた上に、その掃除代まで取られたんだそうだ。
 が、そのほかにもう一つ、室のすみっこに何だかわけのわからんものがあった。白い綺麗な陶器でできているんだが、ちょうどおまる[#「おまる」に傍点]のような大きさの、そしてまたそんな形のもので、そのきんかくし[#「きんかくし」に傍点
前へ 次へ
全159ページ中52ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
大杉 栄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング