ョ貰えることにきまった。が、その後また幾度も会っているうちに、Tは新聞の内容について例の細かいおせっかいを出しはじめた。僕には、このおせっかいが僕の持って生れた性質の上からも、また僕の主義の上からも、許すことができなかった。そして最後に僕は、前の会議の時にもそんなことならもう相談はよしてすぐ帰ると言ったように、金などは一文も貰いたくないと言った。もともと僕は金を貰いに来たのじゃない。またそんな予想もほとんどまったく持って来なかった。ただ東洋各国の同志の連絡を謀りに来たのだ。それができさえすれば、各国は各国で勝手に運動をやる。日本は日本で、どこから金が来なくても、今までもすでに自分で自分の運動を続けて来たのだ。これからだって同じことだ。条件がつくような金は一文も欲しくない。僕はそういう意味のことを、それまでお互いに話ししていた英語で、特に書いて彼に渡した。
 Tはそれで承知した。そしてなお、一般の運動の上で要る金があればいつでも送る、とも約束した。が、いよいよ僕が帰る時には、今少し都合が悪いからというので、金は二千円しか受取らなかった。

 帰るとすぐ、僕は上海でのこの顛末を、まず堺に話
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