ワったくと言ってもよかったかも知れない、共産主義に傾いていたのだ。
が、堺や山川の腹の中には、それよりももっと大きな、あるものがあったのだ。それは危険の感じだ。(二十一字削除)、ということには、まかり間違うと内乱罪にひっかけられる恐れがある。これはその当時僕等がみんな持っていた恐怖だ。そしてこの恐怖が、堺や山川をして、上海の同志等の提案にまるで乗らせなかった、一番の原因なのだ。
Mもそのことは十分に知っていたようだった。そしてその使命を果たすことのできない絶望とともに、日本のいわゆる(十四字削除)らしいかの絶望をもひそかに持っているようだった。彼自身も、見つかればすぐ捕まる、そして幾年の間か分らない入獄の危険を冒してやって来たのだ。そして日本のいわゆる同志は誰一人その話に見向いてもくれないのだ。そしてMはその会議の計画を僕に話しするのにも、最初から僕に正面から加盟を求めるというよりも、むしろごく臆病に、まるで義理の悪い借金にでも来たかのようなおずおずした態度で、まず僕の腹をさぐって見るような話しぶりであった。そして僕がその廻りくどい長い話を黙って一応聞いた上で、「よし行こう」と一言
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