か。」
とまた聞く。そうなって来るとうるさいから、僕も、
「いや、僕は日本人だ。」
と、こんどは本当のことを言う。
「日本人で泥棒? それや珍らしいな。いつフランスへ来たんだい?」
前科幾犯先生はますますひつこく聞いて来る。僕はこの上うるさくなってはと思って、
「まだ来たばかりさ。そしてメーデーにちょっと演説をして捕まったんさ。」
と、本当のまた本当のことを言った。
「そうか、じゃ政治犯だね。」
先生はそう言ったきりで、また向うをむいてほかの先生等と何か話ししはじめた。
すると、今までみんなの中にははいっていたが、黙ってほかのもののおしゃべりを聞いていた、一方の手の少し変な四十ばかりの男が僕のそばへやって来た。
「あなたもメーデーでやられたんですか。僕もやはりそうでコンバで捕まったんですけれど、あなたはどこででした。」
その男は見すぼらしい労働者風をしていたが、言葉は丁寧だった。コンバと言えば、C・G・T・U本部のすぐそばの広場だ。そしてそこにはル・リベルテエルの連中の無政府主義者がうんと集まっていた筈だ。で、僕はこれはいい仲間を見つけたと思って、そこの様子を聞こうと思っ
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