、そうそう寝てばかりいれるものでもない。時々は起きて、室の中をぶらぶらもする。その時の僕の呑気な空想を助けたものは、四方の壁のあちこちに書き散らしてある落書だった。
大がいはみな同じ形式のもので、
[#ここから2字下げ]
〔Rene' de Montmartre〕(モンマルトルのルネ)
〔tombe' pour vol〕(窃盗のために捕まる)
1916(一九一六年)
[#ここで字下げ終わり]
とあるようなのが普通で、そのルネという名がマルセルとなったり、モオリスとなったりして、そしてそのモンマルトルというパリの地名は多くはそれかあるいはモンパルナスだった。そこは、ちょうど本所とか浅草とかいうように、そういう種類の人間の巣窟なのだろう。
また、その名前の下に、
[#ここから2字下げ]
dit l'Italien(通り名、イタリア人)
dit Bonjours aux amis(通り名、友達によろしく)
[#ここで字下げ終わり]
というようなあだ名がついていた。このあとのは殺人犯だったが、まだ同じ殺人犯の男で、「鉄腕」というあだ名があったり、その他いろんなのがあったが、今はも
前へ
次へ
全159ページ中110ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
大杉 栄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング