ェ、前二カ年には、この差引が、

[#ここから横組み]
  1921…………117,023
  1920…………159,790
[#ここで横組み終わり]

 になっている。
 そして死亡数はほんの少しずつ減ってくるのだ。しかもそれは、多くは早死する。貧乏人の子供の上にだ。
 結婚の数もへった。

[#ここから横組み]
  1920…………623,869
  1921…………456,211
  1922…………383,220
[#ここで横組み終わり]

 この結婚の数を人口一万に対する比例にすると、ちょうど次のようになる。

[#ここから横組み]
  1922………….195
  1921………….233
  1920………….318
[#ここで横組み終わり]

 避姙は貧乏人にはちょっとむずかしい。サンガー女史が一番有効なものとして推奨しているカプセルは、一つ五十フランするのだが、それも長くは使えない。また、前に言った瓢箪形のビデなどは、貧乏人の夢にも思えるものじゃない。
 労働者にはかなり子供ができる。僕の知っている労働者で、五人六人、または七人八人と子供をつくったのが、かなりあるが、その多くは、まだ赤ん坊の間か、あるいはほんのまだ子供の間に死ぬ。往来をぶらぶらするいかがわしい淑女達でも二十歳前に生んだ子供を一人ぐらいは持っているのがおおい。
 そこで、前に言った赤ん坊の頭ぐらいはやすやすと通れる、大きな穴や管の便所が必要になってくる。相応の医者へ行けば、五百フランぐらいで、勿論ごく内々で何の世話もなく手術をしてくれる。しかし貧乏人にはそうは行かない。
 堕胎はフランスでは重罪だ。が、こんど、それを軽罪にしたかするとかいう話を、四、五日前の新聞で見た。そこには毎年のこの犯罪数などもあったのだが、今その新聞が手もとにないので、詳しいこともまたはっきりしたことも言えない。
 これは貧乏人にとって、よほどありがたい改正のようだ。が、実際はそうでもないらしい。今までは、重罪だったので、陪審の人たちが多くは被告に同情して、容易にそれを有罪にさせなかった。また、よし有罪ときまっても、容易にその執行をさせなかった。それがこんどは、軽罪のお蔭で、陪審もなくなり、また裁判官の同情もよほどうすらごうと言うのだ。そしてその改正の目的も、実はやはり、そこにあるらしいのだ。
[#地付き]―
前へ 次へ
全80ページ中32ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
大杉 栄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング