キるということの方を現在の一番大きなことのように考えていたのは、まだ本当に自分であなたと私との関係がのみ込めなかったというふうに考えられて来ました。本当に平凡な事実なのですけれども。保子さんといい、神近さんといい、私といい、ただあなたを通じての交渉なのですから、あなたに向っての各自の要求がお互いにぶっつかりさえしなければ(何だか他に言い方があるような気がしますが)、みんなインディファレントでいられる筈だと思います。そうすれば、なお一層よくあなたを理解し合おうとするみんなの努力があれば、そこで初めて完全に手を握ることができるのだと思います。
「そうして今、神近さんと私とは、というよりも私の神近さんに対する気持は、この第一段にいるのだと思います。保子さんに対する私の気持は、第二段にまで進みかけているのですが、保子さんはまだ恐らくは第一段にまでも来てはいらっしゃらないように思われます。そこで私の保子さんに持つ心持は、保子さんには無理すぎることになって来ます。で、今しばらくはインディファレントでいます。あるいはそれ以上に進まないかとも思われます。しかし私としては、保子さんとも神近さんとも、本当
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