ようじゃないか。」
と両隣りの堺と山川とに相談して、コツコツとうしろの板を叩いた。向うでもすぐにやはりコツコツとそれに応じた。
「おい、何で来たんだい?」
「お前さんは?」
「泥棒さ。」
「じゃ頼もしいわね。わたしはどうろぼうよ[#「どうろぼうよ」に傍点]。いくら食ったの?」
「たった半年だ。君は?」
「わたしの方は二週間よ、すぐだわ。こんど出たら本当に堅気になろうと思ってるの。お前さん出たらやって来ない? うちはどこ?」
というような話で、でたらめの所や名を言い合って、とうとう出たら一緒になろうという夫婦約束までもしてしまった。
「大ぶお安くないな。だが、あのどうろぼう[#「どうろぼう」に傍点]というのは何だい?」
「さあ、僕にもよく分らないがね。」
と堺と話している中へ、山川もその詮議に加わって、ようやくそれが道路妨害の道路妨だということが分った。そして、
「泥棒に道路妨はいいな。」
と三人で大笑いした。さすがの彼女もあからさまにその本職を言いかねたのか、それともほんの語呂合せのいたずらをやったのか。
また、未決監から裁判所へ喚び出される。その他にも僕はよく、余罪があっ
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