か、五番目のは何て風だとかいうようなことを、隣り近所の窓と批評し合った。時とすると、
「おい、三番目の姉さん、ちょいと顔をお見せよ。」などと呼ぶ奴もある。女どもの方でも、自分からちょっと編笠を持ちあげて、こっちを見るのか、自分の顔を見せるのか、する奴もある。時とすると、舌を出したり、赤んべをして見せたりする奴すらある。
僕はぼんやりとそれを見ていて、よく看守に怒鳴りつけられた。
たしか屋上演説事件の治安警察法違反の時と思う。例の通り警察から警視庁、警視庁から東京監獄へとつれて行かれて、まず例のシャモ箱の中に入れられた。もっともこれは男三郎君の時に話したような面会所のそばのではない。そんなのがあちこちにあるんだ。こんどは、連れて来られるとすぐ、所持品を調べられたり、着物を着換えさせたり、身分罪名人相などの例のカードを作られたりする、その間自分の番の来るのを待っている[#「待っている」は底本では「持っている」]、シャモ箱だ。
しばらくすると、背中合せのシャモ箱の方へも人がはいったような気はいがする。ぺちゃくちゃと女のらしい声がする。
「おい、うしろへ女が来たようだぜ。一つ話をして見
前へ
次へ
全51ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
大杉 栄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング