べき前置詞に就いての問題である。本間久雄君はそれを「の為めの」即ち for と解釈した。中村星湖君はそれを「から出た」即ちフランス語の de part と解釈した。又富田砕花君は「の所有する」即ち of と解釈しているらしい。しかしこれは、甞《か》つて本当の意味の民主政治を、民衆によって民衆の為めに造られ而して民衆の所有する政府、即ち Government by the people, for the people and of the people と云ったように、先きの三君のを合せて、民衆によって民衆の為めに造られ而して民衆の所有する芸術、即ち Art by the people, for the people and of the people と云わなければ精確ではないのだ。そして其の中の「民衆によって」若しくは「民衆から出た」と云うのが最も肝心である事は勿論である。田中純君は正しく云う。「民衆自らの造り出した芸術はそれ自身民衆の為めの芸術であり、民衆の所有する芸術であり得る。真実に十分に民衆の為めの芸術と云い得るものは、民衆自らの産み出した芸術であらねばならない。」
 幸いに
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