人がどうして芸術をやろうなどと云う考を持つ事が出来るのか私には分らない。……芸術は吾々の無力の告白である。……芸術は一つの渇想に過ぎない。……私の若さや健康を再び見る為めには、自然を娯しむ為めには、限りなく私を愛する女の為めには、美しい子供の為めには、私は私の全芸術を与える。さあ、私の全芸術を今此処へ出す。其の残りの物を私にくれ。」
若し吾々が「此の残りの物」の僅かでも不仕合な人々に与える事が出来たら、生に少しの喜びでも与える事が出来たら、よしそれが芸術を犠牲にしてでも、吾々はそれを悔まない。
[#地から1字上げ]〔『早稲田文学』一九一七年十月号〕
底本:「日本プロレタリア文学評論集・1 前期プロレタリア文学評論集」新日本出版社
1990(平成2)年10月30日初版
初出:「早稲田文学」
1917(大正6)年10月号
入力:田中敬三
校正:土屋隆
2009年3月24日作成
青空文庫作成ファイル:
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