いうのに学生大会が開かれて、二年三年四年の全生徒は校長と運命をともにするという満場一致の決議をした。

 この騒ぎは学年試験を前に控えて一カ月ばかり続いた。そして最初の同盟休校というのが同盟退校の決議にまで進んだ。
 もうこんな学校に用はないというので、ガラス戸は滅茶苦茶にこわされた。そして生徒控室にあった机や椅子は、ほとんど全部火鉢の中のたき木になってしまった。
 ある先生は、組合と内通しているというので、夜車で練兵場を通るところを袋だたきにされた。
 ある日父と母とは茶の間の火鉢のそばへ僕を呼んだ。
「この頃お前はちっとも学校へ行かんで騒いでいるそうだが……」
 父の話は、組合から生徒の父兄に送って来たものによって、多少校長を批難して、明日からでも学校へ出ろというようなことであった。
「いやです。」
 僕はただ一言そう言ったきりで、席を蹴って起ちあがった。
「あの子はいったん何か言いだしたら、何があっても聞かんのですから、どうぞそのままにほおって置いて下さい。」
 母はしきりに父をなだめて、懇願しているようだった。

 しかしこの騒ぎは、組合で不信任案を取消すということと、校長が辞
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