た。
 次には彼等もやはり竹竿を持って来た。しかしそれは、多くは、長い間物ほしに使ったのや、あるいはどこかの古い垣根から引っこぬいて来たのだった。接戦がはじまって、両方でパチパチ叩き合っているうちに、彼等の竹竿はみなめちゃくちゃに折れてしまった。
 二度とも僕は一番先登にいたんだが、向うでもやはり二度とも同じ奴が先登にいた。そいつは仲町の隣りの下町の、ある豆腐屋の小僧で、頭に大きな禿があるので、それを隠すためにちょん髷を結っていた。もう十五、六になっていたんだろうが、喧嘩がばかに好きで、一銭か二銭かで喧嘩を買って歩くという男だった。この時にもやはり幾らか出して敵の仲間に入れて貰ったのだ。僕はそいつが気味が悪いのと同時に、憎らしくって堪らなかった。で、どうかしてそいつを取っちめてやろうと思っていた。
 三度目の時は石合戦だった。両方で懐ろにうんと小石をつめこんで、遠くからそれを投げ合っては進んで行った。どうしたのか、敵の方が早く弾丸がなくなって、そろそろ尻ごみしはじめた。僕はどしどし詰めよせて行った。敵は総敗北になった。が、ちょん髷先生ただ一人、ふみ止まっていて動かない。とうとうみんなで
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