させたのは、ほぼこの辺からじゃなかろうかと思う。
 そして、もう百方策尽きているところへ、神近から金を送ろうかと言って来た。
「あなたが困るのは私が困るも同じことだ。野枝さんが困って、そのためにあなたが困れば、私もまたやはりそのために困るのだ。だから、誰のため彼のためということはいっさい言わずに、お送りしましょう。」
 神近がこう言って来る腹の中には、僕に早く帰って欲しいという一念があることは明らかなのであるが、しかし彼女には、こういった寛大な姉さんらしい気持が多分にあったことも同じように明らかだった。そして僕は今はこの寛大にたよるほかに道はなかった。
 神近からは何でも二十円ばかり送って来た。そして僕は、宿屋の方の多少の払いをして、僕一人急いで東京に帰った。神近から少しでもまとまった金をかりたのはこれが初めてなのだ。
 伊藤はとうとう困りぬいて、子供を近村のものに預けて、僕の下宿にころがりこんで来た。そして二人は、もう四、五カ月の間、ますます困窮しつつ、一緒に愚図愚図していた。が、いよいよこんどの僕の葉山行きを期として、二人の別居を実行することにきめたのだった。
 神近は僕等のこの別
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