らっしゃりたいですって。これからの方針も何もかも、もう自分一人でちゃんときめていらっしゃるんだわ。ね、おばさん、本当にしっかりしていらっしゃるんだから、わたし栄さんに代っておばさんやおじさんにお願いしますわ、早く栄さんのお望み通りに東京へ出しておやんなさるといいわ。」
「まあ、そんなに勉強しているんですかね。わたしはまた、うちで少し気が変だなんて言うから、どんなに心配していたか知れないの。そして黙って見ているんだけれど、べつにこれといって変なところもなしね。かえって変に思っていたくらいですわ。礼ちゃん、本当にありがとうよ。わたし、それですっかり安心したわ。」
僕はこの話し声を聞いて、本を閉じて、一人でしくしく泣きながら、どんなことがあってもうんと勉強して、彼女のためにだけでもえらい人間になって見せると一人で誓った。
その晩は珍らしく礼ちゃんが夜遊びに来た。が、その日の話については、彼女も何にも言わなければ、僕もまた何にも言うことができなかった。僕はただ黙って、心の中でだけ彼女に感謝しているほかはなかった。そして彼女はいつもと同じように、僕を慰さめ励まして、幼な物語に夜を更かして自分
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