だ。
が、僕のこの例を見て、仲間が大ぶ増えた。そしてその仲間等は、僕が一緒にいれば見つかって捕まっても大事はないと思ったのか、いつも僕を誘っては取りに行った。僕はこの仲間の中にはいって妙なことを発見した。それは、みんなの弾丸を一つにまとめて、ジャン拳で番をきめて、どこかへそれを売りに行くのだった。そして帰りには何かの菓子を買って来た。僕も一度その仲間入りをした。もっともジャン拳だけは遁れた。それがどうした訳だったか、その一度きりで僕はまた仲間はずれになってしまった。この仲間というのは、町はずれの、ちょっと貧民窟といったようなところの子供等だった。
この家の裏に広い竹藪があった。栗だの、柿だの、梨だの、梅だのの、いろんな果物の木もあった。
そしてその竹藪には、孟宗のほかに、細い、その竹の子をおもちゃにしてポンポン吹いて鳴らす竹があった。やはりどうかした拍子に急に会いたくなって、僕は一度、その竹の子を持って光子さんのところへ行ったことがあった。
しかしこの竹藪はそんな優しいことばかりには使われなかった。
新発田は新発田町というのと、新発田本村というのと二つに分れていた。町というのは昔の町人町で、本村というのは侍屋敷のあったところだ。今でもやはりそうだが、その当時もやはり大体そうなっていた。小学校も尋常小学校は別々にあった。そしてこの町と本村では、風俗にも気風にも大ぶ違うところがあった。
町の子が練兵場に遊びに来ると、彼等は障害物も何もできないので僕等はよく彼等をからかったり苛めたりした。そんなことがいろいろと重なって、とうとう町の子と僕等との長い間解けなかった大喧嘩となった。
僕等の方は十二、三の子が十人ほどいた。士官の子は僕一人で、あとはみな土地の子だった。そして僕は十で一番年下だった。町の方は二十人くらいから三十人くらいまでいた。年はやはり十二、三が多いのだが、十四、五のも三、四人まじっていた。
戦争は大がい片田町から町の方の仲町というのに通ずる竹町で行われた。いつも向うから押しよせて来るので、僕等はそれを竹町の入口で防いだのだった。竹町というのは、わりに道はばも広く、それに両側に家がごくまばらだったので、暗黙の間にそこを戦場ときめてしまったのだ。
僕は家の竹藪から手頃の竹を切ってみんなに渡した。手ぶらで来た敵は、それでもう第一戦で負けてしまっ
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