ので、僕はあんまり長く話ししていてはいけまいと思って、みんながしきりにとめるのも聞かずに、礼ちゃんにだけそっと僕の思った通りのことを話して、いい加減に切りあげて帰った。
その後も折々見舞おうとは思ったのだが、僕は伊藤の行っている九十九里の御宿へ行ったり来たりしていて、そのひまがちっともなかった。そして、そうこうしているうちに、礼ちゃんから隅田死亡という知らせを受けとった。
さっそく行って見ると、隅田の死骸のそばでは、大勢の男女が集まって、大きな珠数のような綱のようなものをみんなでぐるぐる廻しては、ナムアミダー、ナムアミダーと夢中になって怒鳴っていた。下のほかの室にも僕の知らない大勢の人がいた。礼ちゃんはすぐ僕を二階へ案内して行った。
僕は今でもまだそうだが、死んだ人の家へ行ってどうお悔みを言っていいか知らなかった。で、黙ってただお辞儀をした。
「やっぱりあなたのおっしゃった通りでしたわ。」
礼ちゃんはすっかりやつれて泣顔をしながらも、それでもいつもの生々としたはっきりした声で話しだした。
「私こんなことを言っちゃいけないんでしょうけれど、隅田のなくなることはもうとうから覚悟していましたし、今じゃ隅田のなくなった悲しみよりも私のこれからのからだの方がよっぽど心配なんですの。」
僕は来る早々意外なことを聞くものだと思った。
「経済上の心配じゃないんです。それはどうとかしてやって行けます。けれど、隅田がなくなって方々から親戚のものが集まって来てから、私今までまるでいじめられ通しでいるんです。そしてこれからもたぶん一生いじめられ通しで行くんだと思うんです。」
僕はますます意外なことを聞くものだと思った。そしてやはり黙ったまま聞いていた。
「隅田の国の方の人が来るとすぐ、私をつかまえて、おやお前はまだ髪を切らずにいるんかい、と言うんでしょう。私、今時まだこんなことを言う人があるのかと思って、何とも返事ができなかったくらいですわ。するとこんどは、壁にかけてあるヴァイオリンを見つけて、ああこれは何とかさんにすぐあげておしまい、後家さんにはもう鳴物などいっさい要らないんだから、と言うんですもの。私、髪なんか切ることは何とも思いませんわ。また、ヴァイオリンなどもちっとも欲しかありませんわ。けれども今そんなにして、みんなの言うように本当の尼さんのようになったところで、それが
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