この努力から生じた活動の経験がある。活動の経験から生じた理想がある。俺達はあくまでも戦闘する。
戦闘は自我の能力の演習である。自我の権威の試金石である。俺達の圏内に、漸々になまけものを引寄せて、そいつらを戦士に化せしめる磁鉄である。
そしてこの戦闘は俺達の間の生活の中に、新しき意義と新しき力とを生ぜしめて、俺達の建設しようとする新しい工場の芽を萌ましめるのである。
ああ、俺はあんまり理窟を言いすぎた。理窟は鎖を解かない。理窟は胃の腑の鍵を奪い返さない。
鎖はますますきつく俺達をしめて来た。胃の腑の鍵もますますかたくしまって来た。さすがのなまけものの衆愚も、そろそろ悶え出して来た。自覚せる戦闘的少数者の努力は今だ。俺は俺の手足に巻きついている鎖を棄てて立った。
俺は目をさました。とうに夜も明けて、八月なかばの朝日が、俺のねぼけ面を照りつけている。
底本:「全集・現代文学の発見・第一巻 最初の衝撃」学芸書林
1968(昭和43)年9月10日第1刷発行
入力:山根鋭二
校正:浜野 智
1998年8月20日公開
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