を競うている。そして、この花間を蒼面痩躯の人達が首うなだれておもむろに逍遙している。僕は折々自分のからだのはなはだ頑健なのを嘆ずることがある。色も香もない冷酷な石壁の間に欠伸しているよりは、むしろ病んで蝶舞い虫飛ぶの花間に息喘ぐ方が、などと思うことがある。帰る頃にはコスモスが盛んだろうということだが、ここにもコスモスは年の終りの花王として花壇に時めく。お互いにこのコスモスの咲く頃を鶴首して待とう。
 去年の春は春風吹き荒んで、揚花雪落覆白蘋、青鳥飛去銜赤巾というような景色だったが、ことしの春の世の中はどうだったろう。いずれ面白い話がいろいろあることと想像している。
 兄が近所に来てくれたので家のことはまずまず安心した。こんどの兄の子は男か女か。兄の細君にもいろいろ世話になるだろう。よろしく。進※[#始め二重括弧、1−2−54]三弟※[#終わり二重括弧、1−2−55]の腕白には大ぶ困らせられたようだね。人間の子を育てるのはお雛様や人形を弄ぶのとは少し訳が違う。もし足下等の女の手に自由自在になるような男の子なら、僕はその子の将来を見かぎる。教育の要は角をためることでなくして、ただその出る方
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