この重荷を実際に負う足下としては、またいろいろ将来の細かいことを心配する女性の足下としては、ずいぶん心配なことと思う。僕もいろいろ考えて見た。目下僕が出獄後これに処する策は、大体次のような次第になる。
 まず出版をやって見たい。これは足下もかねて望んでいるところだ。しかし、僕はこれを商売としてよりは、むしろ社会教育の一事業としてごく堅く真面目にやりたい。あるいはその方がかえって商売になるかも知れん。若宮の雑誌を機関としてもよし、また別に何か出してもいい。
 第二に、出版は今言うがごとく純商売でないとすれば、何か別に生活の道がなければならぬ。これには出版と直接関係のある本屋をやるのも面白いと思う。いつかもこんな計画はあった。
 しかし僕は、僕の今までの成行として、これもかつて計画はあった、支那の先生達の世話をするのがもっとも確実な、もっとも安全な、もっとも容易なことではないかと思う。すでに十分の信用はある、十分の同情はある、さらに僕も語学や何かを教えるという実利を加えれば、ほとんど申し分がない。少ししっかりした女中が居れば、足下にもさほど骨の折れることでもない。もしできるなら、僕の出獄後
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