方がよかろう。
父は着物などには一向無頓着な人であり、また母はあんな人でもあれば、ずいぶんみんな不自由勝ちにいることと思う。大きな男の子には父のものがそのまま役に立つのもあろう。また、できるなら小さい子供等にも、この正月にさっぱりしたなりをさせてくれ。そして正月には餅でもウンと食わして、急に孤児になったというようなさびしい感じを起させないように、陽気に面白く遊ばしてくれ。
なお、みんなは幼い時から母に別れて、いろいろな人の手に渡って育てられているのだから、ずいぶんいじけたり固くなったりして、本当に子供らしい無邪気な可愛気のない子もあるかも知れぬ。これらは、足下の暖かい情ですべて溶けてしまうように骨折ってくれ。
足下の前の手紙に、一人で呑気にというような具合には行かぬものだろうかとあったが、本当に思わぬことからついにそういうこととなってしまった。足下はどうしても苦労をして一生を過ごさねばならぬ運命の人らしい。しかし人生には苦もあれば楽もある。またその苦の中にも楽がある。いかなる境遇にあっても、常にこの楽を現実としてまた理想として暮して行かねばならぬ。幸い僕等には子がない。また今後も
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