もし母が出るとなれば来年の三、四月の頃をもってその期としたいと書き送ったが、こんどの母の態度を見ては、この上なお一日といえども子供を委して置くことはできない。すぐさま足下がかわって家政をとり、子供等をみんな引連れて、もしできるならこの暮れ中に東京に引上げたらどうか。
 伸は当分今の地位で辛棒せねばなるまい。将来についてはどんな希望をもっているのか知らぬが、この休み中は東京で一緒に暮すこととして、その間に若宮などに会わせて、よく相談さすがいい。もっとも、やがて徴兵適齢にもなるのだから、愚図愚図してもいられまい。その希望等については詳しく知らしてくれ。
 松枝は横浜のどんな学校にいるのか知らぬが、東京の相応の学校に転校したらよかろう。伸の話では、教会で教育してくれると言っていたが、これもよしあしであるが、もしそんな運びになるなら当分それでもよかろう。いずれにしてもこの休み中は東京で一緒に暮して、みなとよく相談するがいい。僕は久しく会わぬが、もう十七、八のいい娘盛りだと思う。したがって自分でも何等かの考えもあり望みもあるだろう。それらも詳しく知らしてくれ。
 勇は下宿から家に越して来て、家か
前へ 次へ
全118ページ中75ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
大杉 栄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング