田家に保管を頼みたい。
また、母が止ることとなれば、母はすべての私有権を放棄して、そして同じくこれを山田家に保管させたい。母が家のために尽すと言いながらなおその財産の幾部分かの私有権を主張するのはすこぶる可笑しなことになる。しかし、それでは母として将来の身を不安心に思うかも知れぬ。もししからば、その最初の持参金だけは、将来不幸にして離縁というようなことになれば返す、との証文を渡して置いてもよかろう。もっとも、これには他の条件も附せねばならぬが。
また、子供の教育をも僕等に委せられぬとの議論もあるかも知れぬ。この任は、他に相応の人があるならお譲りしてもいい。
さらに進んで大杉家を僕に継がすこともできぬと言う人もあるかも知れぬ。さればこれも、誰にでもお譲りする。ただ一条件がある。それは前述のごとき家の整理、子供の教育方針などの判然きまった後でなければならぬことだ。この安心のできぬ間は、僕は決して動かない。
まずこれで大体の話はすんだようだ。足下はこの手紙を持って山田へ行ってこの相談をして貰いたい。山田はその意見を猪伯父あるいは伸の許に書き送って貰いたい。同時に足下は静岡へ行って、一
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