二人の当分の教育のためには扶助料をもって当てたい。もし工場の金が取れるようなら、倹約すればこれでやれぬことはなかろうと思う。
しかし大勢のことだ、案外に金の掛ることもあるだろう。もとより不足は僕が負担せねばならぬ。もしやむを得なければ、僕は当分社会運動の表面から退いてもなさねばならぬことはする。足下は元来社会主義者というわけではない。ただ義兄および夫に附随してその運動に加わっていたと言うに過ぎぬ。もし子供の世話をするとなれば、運動のごときいろいろな累を及ぼすことは避けて貰いたい。
以上は僕が家の処分をするとしての大体の考えだが、さらにここに考えねばならぬことがある。それは僕の身の上だ。元来僕は自ら家を去ったものだ。そして父からはまったく勘当同様の待遇を受けていたものだ。したがって親戚全体からもはなはだ不信用だ。されば今、こんな問題に対しては遠慮に遠慮を重ねて行動するのが至当であろうと思う。
まず前述のごとくにして得べき金、これを僕の手に渡すのは誰もみな不賛成だろう。僕自身もまたはなはだ危険に感ずる。僕はもとより家の金を一厘たりとも僕自身の用のために費いたくない。それで金はすべて山
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