誤解がわだかまっているようだ。しかし僕は、母は母として尊敬する。ことに父の死後はなおさらに謹みを深くする。君もこんどは保子が中にはいることでもあり、十分お互いの融和を謀るがいい。
それから、君が今勉めなければならぬ最大の責務は、幼弟幼妹等に対して十分の慰めと励みとを与えることだ。父は死ぬ。頼みとする僕は牢屋にいる。みんなはほとんど絶望の淵にいるに違いない。君以下の弟妹等の今後の方針については保子に詳しく書き送ってある。なお、君の希望も十分保子に話してくれ。
この手紙は伯父が三保にいるなら見せてくれ。また、母にも、もし君に差支えがないなら、見せてくれ。
*
堀保子宛・明治四十二年十一月二十四日
一昨々日大体の話はしたが、時間の都合やまた口の不自由なところから、十分の話もできず、言い落したこともありまた言い切れないこともあった。この手紙で再び詳しき僕の意見を言おう。
まず第一の問題は母だ。弟は出すと言っている。また弟の言によれば母自身も出る意があるとのことだ。母から足下に送った手紙には、あくまで止って家のために尽すとあるそうだ。僕の思うには、出すというのは勿論酷だ。しかし、
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