、外の本が来ているようだ。これは至急送るように。
吉川夫人のことは都合よく行ってよかった。子供のあるのは少しうるさくもあろうが、またその世話をしたりするのも面白いものだ。お互いに助け合って仲よく暮して行くがいい。
諸君によろしく。暑くなる、足下も体を大事に。さよなら。
*
堀保子宛・明治四十二年八月七日
ことしは急に激しい暑さになったので、社会では病人死人はなはだ多いよし。ことに弱いからだの足下および病を抱く諸友人の身の上心痛に堪えない。
まだ市ヶ谷にいた時、一日、堺と相語る機会を得て、数人の友人の名を挙げて、再び相見る時のなからんことを恐れた。はたして坂口は死んだ。そして今また、横田※[#始め二重括弧、1−2−54]兵馬、当時第一高等学校在学中※[#終わり二重括弧、1−2−55]が死になんなんとしている。ただ意外なのは汪の死だ。あの肥え太った丈夫そうな男がね。横田には折々見舞いの手紙をやってくれ。彼は僕のもっとも懐しい友人の一人だ。否、唯一のなつかしい友人だ。
八月と言えば例の月だ。足下と僕とが初めて霊肉の交りを遂げた思い出多い月だ。足下のいわゆる「冷静なる」僕とい
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