って見るがいいさ。
 女中のかわりに誰か相応の人をほしいというような話であったが、夏になれば例のごとく動けなくなる情けない体だ。そんな時にちょっとかわりに集金ぐらいに出掛ける人がなくてははなはだ不便なことだろう。そこでちょっと思い出したが、世民の細君はどうしているか。こんどは赤ん坊もあることなり、大いに困っているのじゃないか。もし何だと両方に好都合だと思うが、足下にその気があるなら、それとなく訪ねて行って見ないか。
『早稲田文学』は小説ばかりだからというので不許になった。こんどは『帝国文学』と『新天地』とを入れて見てくれ。もしできるなら一月頃からのが欲しい。
 抱月の近代文学研究が出たら買ってくれ。文芸百科全書はいずれ高いものだろうと思うが、何とかして手にいれることはできないか。兄キなどは持っていていい本だと思うがね。三宅博士の宇宙、これも大ぶん高い本だからあえて買うには及ばないが、もし誰か持っていたら借りてくれ。
 イタリア文でレスプブリカ(イタリア史)というのが本箱の中にある。たしか同じものが二冊あって、そしてそのいずれもこわれていて、二つ合せて初めて完全なものになるように思った。
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