yせて行った。
読書はこの頃なかなか忙がしい。まず朝はフォィエルバッハの『宗教論』を読む。アルベエル(仏国アナーキスト)の『自由恋愛論』を読む。午後はエスペラント語を専門にやる。先月は読む方ばかりであったが、こんどは、それと書く方とを半々にやる。つまらない文法の練習問題を一々真面目にやって行くなどは、監獄にでもはいって居なければとうていできぬ業だろうと思う。ただ、一人では会話ができないで困る。夕食後就寝まで二時間余りある。その間はトルストイの小説集を読んでいる。
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この頃はノミと蚊と南京虫とが三位一体になって攻め寄せるので、大いに弱っている。僕昨日剃髪した。※[#始め二重括弧、1−2−54]髪を長くのばしていたのを短かく刈ったのだ※[#終わり二重括弧、1−2−55]これは旗などをかついで市中を駆けまわった前非を悔いたのだ。
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由分社宛・明治三十九年五月
どうせ食うなら重罪の方が面白い。軽罪はあまり気がきかない。無罪ならもっとも妙だ。看守さんに聞いたら九年以上との話。マア十年と思って考えて見よう。すると僕が出た時には、堺さんが五十近くの半白爺、秀哉坊がちょうど恋を
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