ト、一〇九八生
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市ヶ谷から(二)
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堀保子宛・明治四十一年一月二十八日
出てからまだ二た月とも経たぬうちに、またおわかれになろうとは、ほんとに思いも寄らなかった。革命家たるわれわれの一生には、こんなことがいずれ幾度もあるのだろうと思うが、情けないうちにもなお何となく趣きのある生涯じゃないか。どうぞ「また無責任なことをして」などと叱っておくれでない。それよりか清馬※[#始め二重括弧、1−2−54]今大逆事件で秋田に終身ではいっている坂本清馬のこと※[#終わり二重括弧、1−2−55]が口ぐせのように歌っていた「行かしゃんせ行かしゃんせ」でも大声に歌ってくれ。
とは言うものの、困ることは困るだろう。お為さんに頼んで、隆文館に事情を話して、少なくとも、もうテンぐらいはとって貰ってもよかろう。安成※[#始め二重括弧、1−2−54]貞雄君※[#終わり二重括弧、1−2−55]から『新声』の原稿料をよこすだろう。毎度ながらまた紫山に少し無理を言え。それからこの次の面会の時に洋服を宅下げするから、飯倉※[#始め二重括弧、1−2−54]質屋※[#終わり二重括弧、1−2−5
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