ス痩せた」というお見舞いを受ける。
ただ東京監獄で面白いのは鳩だ。ちょうど飯頃になると、窓の外でバタバタと羽ばたきをさせながら、妙な声をして呼び立てる。試みに飯を一とかたまり投ってやる。すると、どこからとも知れず十数羽の鳩があわただしく下りて来て、瞬くうちに平らげてしまう。また投ってやる。つい面白さにまぎれて、幾度も幾度も続けさまに投ってやる。ある時などは、飯をみんな投ってやってしまって、汁ばかりすすって飯をすましたこともある。あとで腹がへって困ったけれど、あんなことはまたとない。
巣鴨に帰る。「大そう早かったね、裁判はどうだった」などと看守君はいろいろ心配して尋ねてくれる。何んだか気も落ちつく。ホントーに「うち」に帰ったような気がする。
しかしこの「うち」にいるのも、もうわずかの間となった。僕もまた、久しきイナクチヴの生活にあきた。早く出たい。そして大いに活動したい。この活動については、大ぶ考えたこともある。決心したこともある。出たらゆっくり諸君と語ろう。同志諸君によろしく。
兄の家の番地を忘れたから、この手紙は僕の家に宛てた。守田兄によろしく。さよなら。
[#地付き]巣鴨に
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