事はねえ、直ぐ電話を切つちやおうぢやないか。』
『さうだ、それがいい、それがいい。』
 若い三四人の学生がドタバタと電話室の方へ駆けて行つた。そして暫くすると、皆んなで大きな声でアハハアハハと笑ひこけながら帰つて来た。
『とうたう切つちやつたんですよ。奴等は不意打を食つて大あはてにあはててゐるんですがね、なあに構ふもんですか。』一緒に行つたHが、また腹をかかへながら、笑つて云つた。そして、
『しかし、とにかく邪魔のはいらんうちに早くやつちやおうぢやないか。』
 と皆んなに云ひながら、
『先生もどうぞ上へ。』
 と云つて、皆んなで又講堂の方へ駆け出した。僕も其のあとへ随いて行つた。講壇では学校の講師の何んとか云ふ人が何にか話してゐた。委員の一人は何にか紙片に書いて講壇の上へ持つて行つた。其の講師はそれを見ると、急に話をいい加減に端折つて講壇から下りた。そしてHが聴衆に僕を紹介した。
 盛んな拍手が起つた。僕はもう、さつき考へてゐたやうな、椅子に腰かけて話さうなぞと云ふ呑気な心持ではゐられなくなつた。そしてとうたう、苦しいのを我まんしいしい、一時間余り喋舌り続けた。
 僕が何にを喋舌つたか
前へ 次へ
全7ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
大杉 栄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング