間流眄を向けそう云う真紀子の笑顔を見て、矢代は、まだ東野に対して弟子とまでは云いがたいなと思った。
「真紀子君のあのときのあの句は良いよ。待つ朝の鏡にうつす青落葉――そういうんだがね。いいだろう君、ルクサンブールの朝がよく出ているよ。それも一寸自棄ぱちな静かな凄さが潜んでいてね。」
東野の説明を俟つまでもなく、その句の「鏡にうつす」という自動的な表現で、久慈と別れる朝の真紀子の覚悟が、青葉を繊手で※[#「てへん+宛」、第3水準1−84−80]ぎ落とすように鮮に出ている句だと矢代は感じた。そして、なおそのころの真紀子たちの心境の移り動きも知りたくなって、いま少しその他の句を披講して貰いたいと頼んでみた。
「まだいろいろあったね。荷造りのくずれ痛める冬の旅――これもまア、見られる。」
「それは先生に直していただいたの。」と真紀子は云ったが、そう云い終ると一寸首を竦めて俯向いた。
「いまの句は句以外に、久慈と僕との間のことで面白い意味があるのだよ。これは話さぬと実は味も少いのだが。」
一つ話してみるかと東野は相談を真紀子にしかける風に彼女を見てから、久慈が真紀子と別れるとき東野の宿へ来た
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