諸君のこともまた出たのさ。そのとき最後に久木男爵が、君に自分の会社へ来てくれる意志があるか、どうか。一度訊ねてみてくれと僕に云うのだ。僕は君の会社向きでないことを云って、一応反対したんだがね。男爵の方はまた、考えがあると見えて、それだから君に入社して貰いたいというんだね。それなら話は分るが、その代りに高給を出してくれるか東野大学出身だからと、つい僕は冗談を云ったのだよ。そしたところが、即座にそれは僕に任すというのだ。僕にだよ。面白いじゃないか。」
と東野は云ってにやにやしながら矢代の顔を窺った。
「それであなたは幾らくれるんですか。」
他の会社へならともかく、聞いたときから久木会社へは勤める気持ちのさらに動かぬ事情もあり、矢代は給料のことなども冗談のつもりでそんなに露骨に訊ねられた。
「それで僕は、じゃ、無給にしようと答えたのさ。本当の話だよ。どうかね。」
無茶な話とはいえ、考えればこれには含蓄ある展望も開けていた。しかし無給とあればともかく、考慮の外で断ることの出来ぬ人情の世界の相談になって来たと、矢代も難問に直面した思いになったが、どこまでが真面目な一点だかその朧ろなところが
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