新時代もいつの間にか古うなると云ったのも実は矢代のその汚点を黒黒と染めている一点に向けて云っても見たものにちがいないと思われた。元来から矢代は、自分に忠実であるという新時代の賞め言葉は嫌いだった。しかし、矢代の親戚のものらが誰も周囲に忠実で来たという美点の中で自分ひとりが自分に忠実に、自分の恋愛を押し貫いてゆこうとすることは、新時代の自己主義者のすることと見られても彼に弁明の言葉はない筈だった。よしたとい、それがむかしから変らぬ恋愛だから無理なしという理由は成り立ったところで、そこに一脈の不快さの残ることは認められた。やはり自分も自分の幸福を追い廻す考えで、ついに外国を渡っていたのかもしれぬ。――こう思うと矢代は、俄にこのときから笑いの去るのもまた覚えるのだった。
「僕はこれでも自分の仕事で、日本の地方という地方は残らず廻ってみたが、お蔭で自分の郷里というものの特質が、この年になってどうやら分って来たな。初めのうちは、姑息で因循なあの保守主義には溜らなかったが、いや、しかし、そういうたものでもないと思うようになったよ。どうもお国自慢になって、君には失礼だけれども、日本でむかしながらの気
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