治をされていたんだね。以後注意するよ。」矢代はそう云いつつも、たしかに今夜の塩野の果敢な行動は、サンゼリゼのときの彼の働きとも共通したものだと思い、あまりにも明快すぎる彼の援助には、眼に見えた効果のあったそれだけにまた不安も感じられた。しかし、千鶴子の母が見えなくなってからは、争われず緊張が解け、明日からまた旅をつづけるホテル住いのような気楽さに戻るのが、いつか身にしみついたものにまでなっているのかと、それもこういうときでなくては分らぬ自分を省みて怪しまれた。
「お母さん、何んだか嬉しそうなの。ぜひ皆さんに泊っていただくようにって、そんな命令ですのよ。どうぞ。」千鶴子は戻って来ると三人を等分に見て笑った。
「そう云われると、急に何んだか寂しくなったね、帰るか、え。」と塩野は佐佐を見た。
「僕は今夜はこの絵に会いに来たんだからね、もうこれで満足だよ。」佐佐はにやにやしながら壁の自分の風景画をまた眺めた。
矢代は千鶴子の母がいろいろの意味で好意を自分に見せてくれたのも、知らぬ間に蔭で侯爵夫人や槙三などの努力に預ったことも多いと思われて、内心に感謝するのだった。しかし、こういう風に万事が自
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