関りないことながら、ふと意味なく自分もともに浮き足立って来るもののあるのが怪しまれた。そして、何かそこに、千鶴子と自分との縁談の進行を妨げている介在物の臭いも幽かに起つのを感ずると、やむない宇佐美家の困惑の有りようも、それとなく伝えたい弁明の意を含むようにも受けとられ、無理ならぬ母の苦しい立場も、これで一つや二つではないのであろうと、話の間、矢代は二人の話から疑心をいだく自分の耳を遠ざけたくなり、ビールのコップに唇をつけるのだった。
「千鶴子さん、何か他になかったかしら、こんなチーズだけでしたの。」と千鶴子の母は娘を顧みて注意した。
「他にって、あったかしら、探して見ますわ。」
 千鶴子は母からのそんな注意に、何か思いがけない思慮を汲みとった身軽さで椅子を放れた。
「黴びてやしませんでしたかしら、何んだか、おかしな物を引っぱり出したりして。――あの子は自分の好きな物じゃないともう何も気がつかないんでございますよ。癖が悪うござんしてね。」と千鶴子の母は、もうこのときは知人の母の謙遜さが見えへだてもとれた眼差だった。
「そんなこと、もう御存知でしてよお母さん。」と千鶴子はドアの傍から云った
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